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DIARY :: AROUND THE CORNER :: 20110803001
日本のIT産業における「失われた20年」の実相
DIARY :: AROUND THE CORNER :: 20110803001

 ソフトウエア開発に関して日常的に非常に価値ある記事を配信しておられる Publickey さんに、
 2011年07月27日付けで「日本のアジャイルムーブメントに、何が起きていたのか、何が起きているのか」という記事が掲載されました。
 この記事は、記事冒頭にも括弧書きで明記されていますが、
 「InfoQに掲載された平鍋健児氏の記事「What has happened and is happening in Japan’s Agile movement」を、
 InfoQ Japan の許可を得て翻訳、転載したもの」とのことで、
 英語圏の読者の方に対して日本におけるアジャイル開発の現状を紹介するスタンスとなっています。

 その中で私が驚いたのは、
 アジャイル開発の一手法として位置付けられる「スクラム」という開発手法の起源が、
 野中郁次郎氏・竹内弘高氏の「The New New Product Development Game(PDF)」(1986年)という論文にある
 との趣旨の記述でした。
 このことについては、「アジャイル開発手法「SCRUM」の真実」という記事で関根信太郎氏らも言及しており、
 日本人を含めて「スクラム」に取り組んでおられる方々の間では周知の事実であるようです。
 しかし、私の知る限りでは、日本のソフトウエア開発一般においては、それ程共有されているとは言えない事柄のように思われます。
 そして、何より、野中氏本人がそのことを知ったのが、
 次の記事の中でご自身が語っておられるように「2010年になってから」とのことです。

 野中氏・竹内氏による「The New New Product Development Game」(1986年)という論文は、
 同じく Publickey さんの別記事「スクラムの生みの親が語るスクラムとはなにか? Innovation Sprint 2011(前編)」にあるように、
 野中氏が防衛大学校において行っていた「日本軍がどうして負けたか」という研究に由来しているとのことです。
 この 研究 は、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(文庫)として出版されており、
 日本の経営組織論研究や組織・人事コンサルティングの分野では必読書となっています。
 また、同書は、3.11東日本大震災を機に一般にも注目が集まっているようで、ご存知の方も多いものと思われます。
 そして、ご本人によると、野中氏の著作の中でこれが最も売れた著作であるようです。
 
 同記事を参考にすると、「スクラム」とは「サイロ」に対する概念として位置付けられ、
 「サイロ」は、組織のそれぞれのセクションが孤立的に存在・行動し、セクション間でバケツリレー的に情報の受け渡しが行われる
 ような組織形態・組織プロセスであるのに対して、
 「スクラム」は、組織のそれぞれのセクション間でのオーバーラップ部分を多くして、情報共有化や一体的行動を促進する
 ような組織形態・組織プロセスである、ということになるでしょう。

 そして、この考え方をソフトウエア開発に持ち込んだのが、ジェフ・サザーランド氏 で、
 「Innovation Sprint 2011(後編)」によると、「ソフトウエア開発の多くが失敗するのは何故か」という問題意識から、
 プロジェクトには、「将来が予測できるプロジェクト」と「将来が予測できないプロジェクト」の2つがある
 (そして、ソフトウエア開発プロジェクトは、開発中に要件が変化するため、後者に該当する)
 PC、マウス、イーサネットやウィンドウインターフェイスなどの、イノベーションを伴う重要なテクノロジーは、
 どれも10名以下のチームで開発されている
 という命題・事実を基に、野中氏らの論文を参考にして、
 要求の変化に適応的に対応でき、イノベーションを達成するために十分な少人数から成る、
 「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「チームメンバー」という3つの役割から構成された
 人的なソフトウエア開発フレームワーク(組織形態・組織プロセス)としての「スクラム」を考案した
 ということになります。
 そして、ソフトウエア開発において、「スクラム」に対して「サイロ」として位置付けられるのが、
 「ウォーターフォール型開発」ということになります。

 私が最初の記事「日本のアジャイルムーブメントに〜」を読んだ時に非常に驚いたのは、
 外面的には、前述したように、「アジャイルソフトウエア開発の起源の1つが日本にあった」という事実ですが、
 内面的には、「その事実が別の歴史的事実を想起させ、そこに歴史の対称性を感じた」からです。
 それは、つまり、生産管理に取り組まれておられる方においては既にお気付きのように、
 製造業では、米国のデミング博士らによってもたらされた「品質管理(QC)」という考え方・手法・活動が、
 日本企業において発展し、日本の製造業が世界的に躍進する原動力になった
 という歴史的事実です。
 すなわち、
 製造業においては、「米国発の概念・手法を日本企業が発展させて躍進した」のに対して、
 ソフトウエア産業においては、「日本発の概念・手法を米国企業が発展させて躍進した
 という歴史的対称性です。

 私はそのような驚きを持って最初の記事を読み、続いて、
 リンクされていた「Innovation Sprint 2011(前編)」「Innovation Sprint 2011(後編)」を読んだわけですが、
 やはり、実際に、サザーランド氏は、「Innovation Sprint 2011(後編)」の中で語っておられるように、
 野中氏らの研究の他にも、
 「日本の製造業にデミング博士の論文が与えた影響」も検討した
 とのことです。
 サザーランド氏は、「スクラム」を生み出すまでに行ったいくつかの取り組みを列挙されていますが、
 上記の事項を最初に挙げておられるところを見ると、
 サザーランド氏は、私が上記のように描写した事柄を戦略的意図を持って行った、ように思われます。
 改めて、「そういうことだったのか」と感じざるを得ませんでした。
 
 野中氏らの論文が英語圏に向けて発表されたのが1986年(日本語の「失敗の本質」は1984年に出版)であり、
 「スクラム」に関する米国のWikipediaの記述 によると、
 1995年に、OOPSLA (Object-Oriented Programming, Systems, Languages & Applications) において、
 「スクラム」に関して、サザーランド氏と Ken Schwaber 氏(前述の関根信太郎氏らの記事 参照)による共同発表が行われ、
 2001年に、Schwaber 氏らによる『Agile Software Development with Scrum』が、
 そして、その邦訳として『アジャイルソフトウェア開発スクラム』が、2003年に出版されています。

 80年代中盤と言えば、日本のバブル経済が頂点に達していた時期であり、
 「Japan as Number One」のような言説・意識も、一般に流布していました。
 バブル経済は90年代前半に崩壊し、その頃から次第に、その反動のように、
 日本的経営に対して、米国的経営の優位性が語られるようになりました。
 そして、90年代中盤に差しかかろうとする頃に、日本でもインターネットの商用利用が開始され、ウィンドウズ95が爆発的に売れまくり、
 IIJ、楽天、現在のミクシィなどの新興企業が次々に登場することになります。
 米国では、現在 Firefox などの開発を行っている Mozilla の起源となった、Netscape Communications Corporation や、
 Yahoo!、Amazon、eBay、Google などのソフトウエア開発をコアコンピタンスとするネット系の企業が創業しています。
 ただ、当時を思い起こすと、これら米国のネット系新興企業について、日本においては、
 高度なソフトウエア開発という側面よりも、新しいビジネスモデルという側面に焦点が当てられていたように記憶しています。
 私は、その頃、所属企業が主催していた小さなシンクタンクや本社の企画戦略部門において、
 時代趨勢予測に取り組んでいたので良く記憶していますが、
 大手経済紙では、MBA的経営手法に関する記事や、
 ソニーを始めとした大手企業が「EVA」などのMBA的経営手法を導入することを伝える記事で溢れていました。(*1)
 蛇足ですが、その頃、現在では米国政府を超えるほどの現金を保有するに至った Apple 社 は、
 事業的にもジリ貧となり、それを打開するための Mac OS 9 の後継 OS (現在の Mac OS X)の自社開発にも行き詰まり、
 結局、一度は Apple を追放された形となった(創業者でもある)スティーブ・ジョブズ氏が立ち上げた NeXT 社の開発による
 OPENSTEP という OS を後継 OS とすることにしています。(*2)
 そして、当時は、インターネットの様々な有益なサイトへのリンクを集約した「ポータルサイトの時代」でした。
 その後、日本では、携帯電話が急速に普及し、またそれによるネット利用が活発化し、
 今では「ガラケー」などと揶揄されますが、携帯電話については世界の最先端を走るまでになりました。
 ゼロ年代以降は、ドットコム・バブルの崩壊を経て、
 生き残った Google などによる「Web 2.0」化が新たなフロンティアを拓き、SEO が重視される「検索の時代」となるものの、
 中盤以降は、Facebook や Twitter などに代表される SNS が世界規模でユーザーを集めるまでに成長し、
 今や「ソーシャルの時代」となっています。
 そして、携帯電話も、汎用的な情報操作機能を持つスマートフォン化が進行するとともに、
 オープンなインターネットに対して、再びプロプライエタリ化を志向するネイティブ・アプリケーション化が進行しています。
 
 ここ25年余りをざっと概観してみましたが、インターネットの登場以降は、
 誤解を恐れずに言えば、日本は、総じて「ネットビジネスの時代」であったように思われます。(*3)
 一方、米国は、表面的には「ネットビジネスの時代」であるとともに、
 本質的には、「ネットビジネス」のコアコンピタンスとしての「ソフトウエア開発の時代」であったと言えるのではないでしょうか。
 そして、ソフトウエア開発に関わる領域において、サザーランド氏や Schwaber 氏などを始めとする多くの方々により、
 それこそ、製造業において日本企業が品質管理を科学(サイエンス)にまで発展させていったように、
 より良いソフトウエア開発を目指した真摯な研究や地道な実践活動が行われていた、というのが歴史の実相であるように思われます。
 つまり、米国においては「ソフトウエア開発サイエンスの時代」でもあった、というわけです。
 また、同様に、「ネットビジネスの時代」のビジネスモデルの根幹には「ネットワーク科学」などのサイエンスがありました。
 すなわち、より正確に言い換えると、米国においては、「サイエンスが主導するネットビジネスの時代」であり、
 それを「サイエンスが主導するソフトウエア開発の時代」が支えていた、ということになります。
 ここに至り、私は、私なりに、日本のIT産業における「失われた20年」の実相の一面を見た思いがします。

 以上が、やや遅きに失したと言えなくもありませんが、
 日本のIT産業に関する、現時点における、私なりの現状認識(事実把握・意味解釈)ということになります。
 とすれば、次に向けて、どのような目標設定のもとで、どのように思考・行動すべきか、ということになりますが、
 このような文明的・歴史的・構造的な状況に対して、全体的・総合的な答えを見い出すことは容易ではないのは明らかです。
 今の私に言えるのは、まずは始めの一歩として、
 このような問題に早くから気付かれ、その解決に取り組んでこられた平鍋氏や関根氏などの方々と問題を共有しつつ、
 各人・各組織が解決を模索し、議論し、時に協力し、その解決に向けて行動していく、ということくらいです。
 しかし、その時に非常に重要な鍵となるのは、やはり、「科学(サイエンス)する志向性」である、との見通しがあります。
 そして、その「サイエンス」は、ダニエル・ピンク氏も指摘するように(『モチベーション3.0』参照)、
 「科学というより俗信」と言うべき「時代遅れ」のものではなく、
 開かれた心で物事の本質に迫る視点を提供してくれるような、新しい「ほんもの」のサイエンスである必要があります。
 個人的には、上記のような、製造業の品質管理に相当するソフトウエア開発サイエンスという位置付けで、
 アジャイルソフトウエア開発についての知見を深めることから始めていきたいと考えています。

  *1:ここで私は批判的な意味を込めて「MBA」という言葉を使いましたが、
    その背景には、私が、ソニーが凋落した原因には、本エントリーで触れたような事情が関与していると考えているからです。
    80年代のソニーは、多くの人があこがれる素晴らしい製品を創造する、現在の Apple のように光り輝く存在でしたが、
    90年代中盤以降、経営者の交代を機にMBA的経営手法を導入する過程で、
    ソニーをソニー足らしめていた、ソニーというブルーオーシャンの真のコアコンピタンス、
    ソニーらしさを生み出す根源としてのソニーの魂・ミームのようなものを失ってしまったように思われます。
    もちろん、そうだとしても、その原因が、MBA自体なのか、それとも、MBA手法を用いる個人の問題なのか、
    それとも、ソニーの個別プロセスなのかは、断定はできません。
    MBA自体は、実際に私も、日本においてそれに類する学習を行いましたが、
    企業に関する幅広い知識や合理的・論理的思考方法などを得られるため、非常に役立つものであると感じています。
    しかし、合理性や論理性を重視するあまり、それだけでは捉えきれないものへの認識が欠けがちになるようにも感じています。
    特に財務面への志向性が強く、最終的な評価をキャッシュで行うことを合理的であると考えていますが、
    それを絶対視した場合には、キャッシュに換算できないものは無価値なものとして切り捨てられてしまいます。
    その背景にある「現在価値」という考え方は、「現在」を中心に考えるため、
    その企業がこれまで蓄積してきた「過去」や、その企業が創造するかもしれない「未来」を軽視する考え方であるように思われます。
    真のMBA者は、企業の「過去」を尊重し、企業の「未来価値」を最大化するように、「現在」を調整する能力のある人物でしょう。
    ただ、MBAの側からも、そのような欠点を補完すべく「バランス・スコアカード」のような考え方が生まれていますし、
    MBAで学ぶドラッカーは「最適利潤」「(企業目的追求ための)将来の投資の原資としての利益」という考え方を説いています。
    また、最近では、リーマンブラザースやエンロンの事件に伴う批判に対して、米国のビジネススクールで学ぶ学生の一部には、
    医師が「ヒポクラテスの誓い」を立てるように、職業倫理として「MBAの誓い」を行い、
    自らMBA教育の再生や信頼回復を目指す動きもあるようです(『モチベーション3.0』参照)。
  *2:それを契機にジョブズ氏は Apple へと復帰し、
    彼が、競争力を失っていた主力商品の Mac を再び魅力あるものへと創り替え、
    経営危機にあった会社を復活させ、その後の Apple の飛躍をもたらしました。
    このように見ると、Apple というのはジョブズ氏の分身のような存在であるようです。
  *3:これはもちろん、マクロ的状況についての総論的な形容であり、
    ミクロ的に見れば、日本においても、世間的風潮に流されることなく、
    本質的に、真摯にソフトウエア開発に取り組んでこられた方々がいらっしゃるのは、言うまでもありません。
    「日本のアジャイルムーブメントに〜」という記事を書かれた平鍋氏や、
    「アジャイル開発手法〜」という記事を書かれた関根信太郎氏がそうかもしれません。
    そして、プログラミング言語 Ruby を開発されたまつもとゆきひろ氏やその開発コミュニティの方々がそうかもしれません。
    1993年に誕生した Ruby は、ご存知のように、ゼロ年代中盤、
    高い生産性を誇るアジャイルな Web アプリケーションフレームワークである Ruby on Rails を動かす言語として、
    世界中に知れ渡ることとなり、多くのプログラマーや開発マネージャを魅了しています。

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Updated : 2011.08.03 - 05:39